甚大な被害が想定されている南海トラフ地震に備え、高知県は住宅の「耐震化」を支援している。阪神・淡路大震災から1月17日で30年となり、過去の災害を教訓にして私たちが今取り組むべき防災について取材した。
耐震化で速やかに避難ができる態勢を
今後30年以内に80%以上で発生するといわれている南海トラフ地震。高知県は3分続く揺れや津波などで15万3000棟が全壊し、4万2000人が亡くなると想定している。
この記事の画像(12枚)そこで、1981年5月31日以前に建てられた木造住宅に対し、耐震設計に最大44万2000円、改修に最大165万円の補助金を設けていて、2023年度に実施した工事のうち、半数が10万円未満の自己負担で済んでいる。
高知県の南海トラフ地震対策課・伊藤孝課長は「地震の揺れで住宅が倒壊することによって逃げられない、津波に飲み込まれる、そういったことも考えられますので、まずは住宅の耐震化をすることで速やかに避難ができる態勢をとっていただきたい」と話す。
高知県によると、2024年4月から11月末までの補助金の申請件数は、2023年度の同じ時期と比べて1.5倍に増えているという。
「家に人が殺される」木造の怖さ実感
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。死者は6434人に上り、犠牲者の多くが崩れた建物の下敷きになった。揺れの長さは“15秒”だった。
高知県内で住宅の耐震診断を行っている耐震診断士の立道和男さん(61)は、地震発生時のことを「地面がズズズズズって大きな音がして、突き上げられて本当に飛ばされたみたいに、ジャンプしたみたいになって、その後、回すような揺れで、もう歩けない状態」と振り返る。
当時、大阪で工務店を営んでいた立道さんは、自分が手掛けた家に住む人から「家が倒壊してけがをした」と連絡を受けた。隣の家の2階が自分の建てた建物の1階にのっているような状態だったといい、「家に人が殺されるわけですからね。木造住宅のもろさっていうのかな。怖さっていうのもその時に実感した」と話した。
高齢者の一人住まいでは改修進まず
震災から5年後に両親の故郷・高知へ移住した立道さんは、行政の補助金を使った低コストの耐震工事を請け負ってきた。
2024年12月、高知市の住宅で行われた改修工事では、壁に揺れを吸収する装置「ダンパー」を取り付けていた。
耐震診断士・立道和男さん:
筋交い、三角形の斜めになった材とか金物で壁そのものの動きを固定してしまうというのが耐震補強で、通常の工法。ダンパーというのは、震度7が来た段階で、本当は20cm変形するんだけどダンパーが戻そうとする力を働かす。戻すことによって何回かの地震に耐えることができる。命は助かったけど帰れない家じゃ困るので、帰れる家を目指そうよっていうことで今、これをすすめています。
高知県内の耐震化率は89%だが、高齢者が1人で暮らす家は改修工事が進んでいない。
「子どもや孫からも声掛けを行ってほしい」と呼び掛けているという立道さんは「(阪神・淡路大震災から)30年たった今は、次の世代にどうつないでいくかというところに来ている。自分の家だけじゃなくて隣近所みんなで力を合わせて、みんなが防災に強い街づくり・家づくりをやっていってもらいたい。住宅の倒壊による死亡者ゼロを目指したい」と思いを語った。
(高知さんさんテレビ)
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