警視庁渋谷署に入る大山顕徳容疑者=10日
破産手続き前に関連会社の資産を隠したとして破産法違反(詐欺破産)容疑で警視庁に逮捕された再エネ開発会社の社長らは、別の関連会社を通じて風力発電開発を手がけ、北海道では東北電力も事業へ参画していた。事件の発端は太陽光発電事業をめぐるトラブルで、ずさんな事業実態から進行中の再エネ事業の混乱も予想される。
この会社は「NC電源開発」で、逮捕されたのは代表取締役の大山顕徳容疑者(46)=住居不詳。他に同社元役員で中国籍の孟繁栄容疑者(37)=東京都港区南麻布=ら3人が逮捕された。
法人登記によると、同社は平成25年設立。本店登記は令和4年に宮崎市から青森市へ移されたが、代表電話は「03」になっている。関連会社の「NCD WIND」は風力発電開発を手がけ、最近では北海道などで事業を拡大していた。
遠軽町の「(仮称)遠軽ウィンドファーム事業」は最大4万8千キロワットの計画に対し、住民団体が森林破壊などの面から疑問視。今月22日には住民説明会も予定されていた。
中頓別町の「(仮称)中頓別陸上風力発電事業」は東北電力が5年に100%出資。東北電は当時、「権益を譲り受け、NCD WINDの協力をいただきながら開発を進める」としていた。
事業は令和10年4月着工、12年4月運転開始を目指しているが、東北電の広報担当者は「情報収集しているが、現在は東北電力が単独で開発しており、事業に影響はないと考えている」と話した。
国内の風力開発をめぐっては、風の適地が限られる中で北海道北部や東北に計画が集中。環境省北海道地方環境事務所の「風力発電一覧」などによると、道内では5年9月時点で陸上風力発電357基が稼働しており、さらに1753基が計画中で、大規模開発の「草刈り場」となっている現状がある。
また、NC電源開発の別の関連会社は福島県いわき市で建設予定だった太陽光発電所をめぐり、開発に着手しなかったとして取引先とトラブルになり、訴訟を起こされたことから今回の事件が発覚したという。
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