2025年12月 東京・日生劇場(2026年1月~2月福岡・大阪・愛知あり)にて、ミュージカル『十二国記 ‐月の影 影の海‐』が上演されることが決定した。
『十二国記』は、小野不由美による、大河ファンタジー小説。1991年に刊行された『魔性の子』から始まり、翌年刊行された『月の影 影の海』でシリーズ化され、以降30年以上にわたり、熱烈な支持を受けながら書き継がれている。2002年にはNHKにてアニメ化。2019年、18年ぶりとなる新作長編『白銀の墟玄(おかくろ)の月』が刊行された際には、大きな盛り上がりとなり、オリコン「2020年上半期本ランキング」1位を獲得した。世代を超え、愛され続けている日本のファンタジー小説を代表するビッグタイトルを、今回、世界で初めて舞台化される。
『十二国記』は、我々が住む世界と、地球上には存在しない異世界とを舞台に繰り広げられる、壮大なファンタジー。我々が住む世界の陽子と、異界に連れ去られた後の陽子という1人の女子高生・中嶋陽子を、本ミュージカルでは2人の女優が演じる。
(左から)柚香 光 、加藤梨里香
異界に連れ去られた後の中嶋陽子(ヨウコ)を演じるのは、2009年宝塚歌劇団95期生として入団し、2019年に花組のトップスターに就任、2024年に宝塚歌劇団を惜しまれながら退団した柚香 光。柚香は本作が東宝ミュージカル作品初主演となる。
我々が住む世界の陽子を演じるのは、2021年よりミュージカル『レ・ミゼラブル』でコゼット役を務め、可憐さとしなやかさ、力強さを併せ持つ実力派女優として目覚ましい活躍をみせる加藤梨里香。
楽俊は、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』、『ロミオ&ジュリエット』の太田基裕と、ミュージカル『刀剣乱舞』、舞台『キングダム』の牧島輝がWキャストで演じ、景麒を『レ・ミゼラブル』、『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』の相葉裕樹が演じる。
脚本・歌詞は、『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』の元吉庸泰、音楽は、映画『プリキュアオールスターズ F』で楽曲制作を手掛けた深澤恵梨香。演出は、ミュージカル『ローマの休日』、『ダンス オブ ヴァンパイア』、舞台『キングダム』の山田和也が、壮大かつ奥深い人間ドラマを、ミュージカル化しておくる。なお、本舞台では、『十二国記』シリーズ本編の第一作『月の影 影の海』を描く。
キャストコメント
■ヨウコ(中嶋陽子)役:柚香 光 数々の苦難に出会う中で自分の弱さに直面しながらも成長し変わっていくヨウコ。
彼女の言葉はまるで、私が指摘されているかと錯覚するほど、体温を持って私に響きます。彼女を演じさせていただけるこの武者震い。喜びと共に身の引き締まる思いです。男役で幾度も握った剣をヨウコとして気高くふるい、彼女の生きるパワーを貰いながら『十二国記』の世界に、私も真剣に向かいます。試練にまみえる私の姿にどうかご期待ください。
■陽子(中嶋陽子)役:加藤梨里香 大人気作品である『十二国記』初のミュージカル化にて中嶋陽子を演じられること、とても光栄に感じています。私は異国へ連れて行かれる前の陽子を務めます。 人目を気にして本心を閉じ込めている陽子の中に渦巻く繊細な心の機微と丁寧に向き合っていきたいです。2人で1人を演じられることも楽しみですし、今回初共演となる柚香光さんと心をひとつに中嶋陽子として生きられる日々が待ち遠しいです!
お客様が陽子と共に壮大な旅をしていただけるよう、素敵なキャスト、スタッフの皆様と共に精一杯作品創りに励んで参ります!
原作:小野不由美 コメント
『十二国記』を舞台にしたいというお話をいただいて、最初はとても驚きました。しかもミュージカルと聞いて大いに困惑したのを覚えています。およそ舞台に向いたお話とは思えなかったのですが、制作陣と長い時間を掛けてやりとりさせていただき、些細な疑問や、失礼とも思える意見にも誠実に対応してくださったことで、不安を解消することができました。作品をお任せして大丈夫だ、と思わせてくださったことに心から感謝しています。
演出:山田和也 コメント
あの『十二国記』が舞台になります。しかもミュージカルです。そう聞いただけで興奮を禁じ得ないのは私だけではないはずです。『十二国記』をご存知の方は(殊に長年のファンの皆さんは)“舞台化”のニュースだけでも大興奮ではないでしょうか。 まだ『十二国記』をお読みでない方は難しい判断を迫られることになります。読んでから観るか、読まずに観るか……。観劇前にせよ後にせよ、お読みになることを私は強くお勧めします。
ミュージカル『十二国記』は、台本も音楽もゼロから作り上げるオリジナル・ミュージカルです。脚本・歌詞の元吉庸泰さん、音楽の深澤恵梨香さんと「劇場で体験する『十二国記』はどのようなものであるべきか」に鋭意取り組んでいます。そして主人公=中嶋陽子を演じる柚香光さんと加藤梨里香さんのお2人。お2人と『十二国記』に取り組めることは何よりも嬉しく心強いことです。その「主人公を2人の俳優が演じる」というところがこの舞台化の鍵かも知れません。どうぞご期待ください。
【公演情報】 2025年12月 東京 日生劇場
2026年1月~2月 全国ツアー(福岡・大阪・愛知)
【キャスト】 ヨウコ(中嶋陽子):柚香 光 陽子(中嶋陽子):加藤梨里香 楽俊(らくしゅん):太田基裕・牧島 輝(W キャスト)
景麒(けいき):相葉裕樹
【スタッフ】 原作:小野不由美『月の影 影の海 十二国記』(新潮文庫刊) 脚本・歌詞:元吉庸泰 音楽:深澤恵梨香
演出:山田和也
振付:原田 薫 ビジュアルディレクション:松井るみ 美術:平山正太郎 照明:髙見和義 音響:山本浩一 衣裳:中原幸子 ヘアメイク:宮内宏明 映像:横山 翼 アクション:渥美 博 キーボードコンダクター:長濱 司 歌唱指導:本田育代・吉田華奈 演出助手:末永陽一・國武逸郎 舞台監督:北條 孝・都倉宏一郎 舞台化企画:馬場千晃 アシスタントプロデューサー:柴原一公 プロデューサー:塚田淳一・村田晴子
スーパーヴァイザー:今村眞治
作品公式 HP
https://www.tohostage.com/12kokuki/
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2025年4月5日(土)・6日(日)新国立劇場 小劇場にて、Reading Drama『BLINK』が上演されることが決定した。
本作は、英国の劇作家フィル・ポーターによる、“出会わない二人”がつむぐ、奇妙で切ないラブストーリー。他者との関わりを恐れながらも願う、無防備で愛おしい二人の姿を、リーディングドラマとしておくる。
出演は、4月5日(土)13時30分の回を相葉裕樹×石田亜佑美、4月5日(土)18時30分の回を笹森裕貴×能條愛未、4月6日(日)13時30分の回を木原瑠生×小泉萌香、4月6日(日)18時の回を櫻井圭登×矢島舞美(5日18時30分の回は終演後、出演者、スタッフによるアフタートークも開催)となり、各ペア1回限りの上演となる。
演出は、昨年末に新国立劇場でのリーディグ『NOT TALKING』(出演:岡本圭人、sara、長野里美、平田満)も記憶に新しく、22年に本作を日本初演して、作者から賞賛の声を受けた荒井遼。
音楽と演奏を手がけるのは、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』『ダブル・トラブル』など数々のミュージカルの音楽監督を務め、『Fate/Grand Order THE STAGE』などで、鮮烈な音楽を生み出してきた阿蒐禰。音楽で二人の紡ぐ物語を時に優しく包み込み、時に後押しする。
映像作品『舞台美術千思万考』(YouTube にて公開中)でタッグを組んだ荒井遼と阿蒐禰が演劇でもコラボレーションする。
【あらすじ】 世間知らずで一途なジョナ。なかなか自分の存在を認められないソフィ。二人は偶然にも同じような人生経験をした。二人とも最近、親を膵臓がんで亡くしたのだ。自給自足の宗教コミューンで育ったジョナは、コミューンを抜け出し自立しようとする。父を亡くして一人ぼっちになったソフィは、悲しみを吹っ切ろうと父の暮らした部屋を改装して貸すことにする。
やがてジョナがその部屋に引っ越してくると、二人の“出会わない”奇妙な関係が始まり、やがて惹かれ合っていく……。
キャストコメント
■相葉裕樹 この度、Reading Drama『BLINK』に出演させていただくことになりました、相葉裕樹です。 時間や記憶が交錯する独特な世界観の中で、自分がどんな瞬間を生み出せるのか、ワクワクしています。 この作品ならではの感覚を大切にしながら、皆さんと同じ時間を過ごせることを心から楽しみにしています。
ぜひ劇場でお会いしましょう。
■石田亜佑美 朗読劇は、僅かな経験しかない自分ですが、このタイミングでお声がけいただいたことをご縁と考え、挑戦を決めました。 あまり出会ったことのない世界、この奇妙さと居心地の良さを、どう朗読で披露するのか… まだ想像しきれないドキドキがあります。ですが、先輩である矢島舞美さんのお名前を見たときは安心しました。
学び、自分ではない何者かになれる時間を楽しみ精一杯努めますので、ぜひ劇場に足をお運びください。
■笹森裕貴 この度、Reading Drama『BLINK』に出演させていただきます笹森裕貴です。 朗読劇は何回か挑戦させていただきましたが、出演者が二人というのは初めての経験なので、この世界観をどう伝えられるのか、ワクワクしております。
一公演のみの上演なので、大切に演じたいと思います。劇場でお待ちしております!
■能條愛未 この度、Reading Drama『BLINK』にソフィ役として出演させて頂くことになりました、能條愛未です。 これまで色々な作品に参加させていただきましたが、たった 2 人だけでの朗読劇で物語をお客様に届けるというのは初めてで、とても身が引き締まる思いと同時に、この作品の素晴らしさを笹森さんと一緒により多くの皆様に観て感じてもらえるよう全力で演じたいと思っております。
是非劇場にお越しくださいませ。
■木原瑠生 ジョナ役で4月6日の回に出演させていただく木原瑠生です。 新国立劇場に立つのは初めてなのでワクワクしています。 「BLINK」の意味「きらめき」は僕にとってとても縁のある言葉です。 この組み合わせでしか表現できない一瞬のきらめきをお届けできたらいいなと思います。
劇場でお待ちしております。
■小泉萌香 Reading Drama『BLINK』に出演させていただきます、小泉萌香です。 今回の朗読劇はなんと、生演奏での公演ということでとっても楽しみです! みなさまに一瞬のまたたきを届けられるように頑張りたいと思います。 新しい愛の形を見つけられますように。
劇場でお待ちしております。
■櫻井圭登 Reading Drama『BLINK』に出演させて頂きます櫻井圭登です。 この作品に触れさせて頂けるのが今で良かったと感じています。 役者として真っ正面から挑ませて頂きます。 そしていつか立ちたかった新国立劇場。 一度きりの公演ですが、ぜひ皆さんのその目で作品を見届けて頂きたいです。
宜しくお願い致します!
■矢島舞美
この物語を読み進めながら、なんだか清々しい風が吹きだしたような気持ちになりました。出会っていないのに出会ったジョナのおかげで認められていく感覚。自分が真っ暗闇の中、閉じ籠っていた場所から抜け出していく感覚。2人の奇妙な関係性がどう育っていくのか…このペアならではのジョナとソフィの間にどんな音が流れるのか…私たち自身がその場を楽しみながら、皆様にもこの世界に没入していただけるよう努めます!
演出:荒井遼 コメント
“BLINK”というのは、まばたき、きらめきという意味です。主人公たちは、見る、見られるという関係によって出会う。“まなざしのドラマ”です。つまり、「目」が重要なモチーフになっています。父が娘に向ける眼差し。 看病。一眼レフカメラでの監視。ベビーモニター。そして巨大観覧車のロンドンアイ……あとは見てのお楽しみです! 3年前に日本初演しましたが、今回はすべてを一新して、素敵な出演者の方々と、阿蒐禰さんの生演奏と共にリーディグドラマとして新たに上演できることが楽しみです。
小ぢんまりとしているけれど壮大。ちょっと馬鹿げているのに真実。それはつまり、切実な願いや、痛みや、なんだか説明のつかない喜びが溢れているということ。そういう瞬間に出会いたくて僕は芝居をやっているんだと思います。奇跡のような素敵な時間になると思います。ご来場をお待ちしております。
日程:2025年4月5日(土)・6日(日)
会場新国立劇場 小劇場
作 フィル・ポーター 翻訳 大富いずみ 演出 荒井遼
音楽・演奏 阿蒐禰
出演 相葉裕樹×石田亜佑美 笹森裕貴×能條愛未 木原瑠生×小泉萌香
櫻井圭登×矢島舞美
料金(税込) 全席指定:¥7,800 U-22(当日引換券) : ¥3,000 ※U-22 は、当日、要身分証明書提示 ※U-22 は一般発売より受付開始いたします。
先行ではお申し込みいただけませんので、予めご了承ください
03-5791-1812(MAパブリッシング)
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もしも卒業のタイミングを自分で決めることができたら、私たちはいくつまで学生をやり続けるのだろうか。そんな“無期限の青春”を描いたのが舞台『しばしとてこそ』だ。
3年という通常課程を修了し、学校にとどまることを選んだ者だけが進級する<N学年>。授業も自由。通学手段も自由。いい大人だからこそ、自分たちで何でも決められる教室の中で、野放図に青春を謳歌する高校生たち。卒業という決断に保留ボタンを押し続けるモラトリアム期を経て、彼らは何を見つけるのか。これは、ちょっと不思議で、ちょっと不条理で、ちょっと切ない青春コメディだ。
作は、ヨーロッパ企画の大歳倫弘。演出・美術を務めるのは、第31回読売演劇大賞で優秀作品賞と優秀演出家賞を受賞した小沢道成。
さらに、やり残したことに決着をつけるため<N学年>に進級した3人組を阿久津仁愛(ダイチ役)、押田岳(ミツル役)、坪倉康晴(タクロウ役)が演じる。
小沢と3人のキャストに、本作の魅力を語ってもらった。
ーーまずは脚本を読んでの感想をお聞かせください。
阿久津:幅広い年代の人たちが同じクラスで学ぶ<N学年>という設定が面白いなと思いました。
押田:設定がキャッチーだよね。お客さんもスッと入り込める世界観じゃないかなと思う。
坪倉:僕、漢字が苦手なんですよ(笑)。台本を読むときはいつも必ず読めない単語が出てきて、これどういう意味だろうって調べるんですけど、今回はそれがなくて。一度も調べずに読み終えられました(笑)。
一同:(笑)。
坪倉:それくらいわかりやすかったです!
阿久津:登場人物それぞれにやりたいことがあって、目標に向かってまっすぐ進んでいく。その感じがすごく青春だなって思いました。
小沢:しかもそこに10代だけじゃなく、30代から60代まであらゆる世代の人がいて。その中でド直球の青春をやるとどうなるんだろう、というのがこの脚本の面白さだと思います。
坪倉:基本はコメディなんですけど、登場人物一人ひとりがちゃんとピックアップされていて、しっかり内容が詰まってるところも面白いなと思いました。
押田:あとはやっぱり“選択”について考えさせられたというか。人生において選択って何回もあると思うんですけど、本当の意味で自分の意思で選択できている人ってどれくらいいるんだろうって、つい考えさせられる作品になってると思います。
小沢:観ながら『私だったらどうするかな?』って、何かしら自分の人生に重ね合わせられるところがある作品ですよね。
押田:そう思います。個性的なキャラクターがたくさん出てきて、覗き見みたいな感覚で楽しめるというか。
小沢:だから、演出としても、単なるド直球の青春にはおさまらないようにしようかなと、いろいろアイデアを練っているところです。
ーーぜひ演出についても聞かせてください。
坪倉:今回、舞台が客席と客席で挟まれる二面舞台になっているんです。
小沢:バルコニー席もあるから、実質四面と言っていいかもしれない。
坪倉:しかも出番が終わっても袖にハケるんじゃなくて、舞台に残るようになっていて。いろんな角度から見られることもですし、一度もハケない分、役者は常に緊張感をもって、お客さんはすごくワクワクする演出になっているんじゃないかなと思います。
小沢:美術も一見素舞台に近いんですけど、ちょっと特殊な仕掛けをしていて。そこはぜひ楽しみにしていただきたいです。
阿久津:いろんなところにお客さんの視点がある分、舞台上にいる役者としては少し狭く感じることもありますが、小沢さんがその窮屈な感じを解放するようなリードをしてくださるので、とても心強いです。
押田:小沢さんの演出は、一緒につくってくれている感じがすごくいいなと思います。今この流れだったらどこに立ってるのがベストか、演出家さんが役者と一緒に検証してくれるのはありがたいことだなって。
坪倉:僕も四面の経験がないので、考えなくてもいいことまで考えてしまうんですけど、小沢さんがここでこう動いたほうが効果的とか、役の心情に沿った立ち位置や動きを整えてくれるので、安心してお芝居に集中できます。
阿久津:一つの台詞に対しても、僕が台本を読んで考えていたものとは全然違うサブテキストをくださるんです。そのたびにまた違う感情が生まれて、毎回違うダイチになれる。最終的にどのダイチがいちばんしっくり来るのか、今から楽しみです。
押田:僕の知る限り、演出家さんってこういうニュアンスでというふうに抽象的な伝え方をする方と、ロジックで伝える方の2タイプいて、小沢さんは後者。今相手のこの台詞を受けてこういう状況だから、きっと次はこう動くんじゃないかなと論理立てて解説してくれるんです。役者の気持ちもお客さんの気持ちもわかって作品づくりをしてくださっているんだなって一緒にやっていて感じますね。
ーー小沢さんからも3人の俳優の魅力を伺えますか。
小沢:3人とも真面目だし、お芝居が大好き。その前提の上で言うと、康ちゃん(坪倉)は、すごく優しい人。その優しさがきっと、本当はこうやりたいのにやれないとか、みんなのことを俯瞰で見すぎてしまうあまり悩みにつながっているかもしれないですけど、そこが人間として実に魅力的であり、タクロウという役とも重なるところですね。
坪倉:確かに。昔から困っていそうな人には普通に声をかけてきたし、発言するときも言葉を選んでしまうタイプなので、タクロウに関しては『わかるな』と共感するところが多いです。いい人すぎるんですよ、タクロウは。言葉の裏のさらに裏を読んで、変な考え方になっちゃうところがあって、そういうところは結構似ているのかな。
小沢:がっくん(押田)は、考えるのが好きな人。演じるミツルもノリで好き放題やっているように見えて、実は物事をしっかり考えているところもあって、でもそれが空回っちゃう。そういうところはがっくんにもあるんじゃないかなって。
押田:ダイチとミツルとタクロウの3人でバンドをやろうというところから物語は始まって。でも同じクラスの大人たちがそれに乗っかってきて、いろんな問題が起きていく。その中でミツルは自分の味方を増やそうと立ち回るんですけど、この味方を増やすムーブに走ってるところがダサくて女々しくて、でもすごく共感できちゃうんですよ。ミツルはガワ(外側)はオラついているけど、中身はめっちゃ女々しい。そこは自分も持っている部分なので、しっかり使って演じようと思いました。
小沢:にっちゃん(阿久津)は何か思うことがあってもなかなか言えずに、家で考えて自分で処理して、ちゃんと次の日にはリセットしてモチベーションを上げてくる人なのかなと、初めてお顔を見たときから思っていました。ちゃんと自分で考えてからと言ってる間に物事がどんどん進んでいっちゃうこととか、よくあるんじゃない? なんだか占いみたいな時間になっちゃったけど(笑)。
阿久津:当たってます(笑)。ダイチも最後のほうで爆発するんですけど、ああいうふうに自分の中で溜め込んで、酔っ払った勢いで人にぶちまけるみたいなところはありますね(笑)。
MMJプロデュース公演『しばしとてこそ』
ーー男同士の友情って創作ではさっぱりとした「男ってバカね」みたいな描かれ方が多いんですけど、ダイチたちの関係はおっしゃる通りちょっと女々しくて面倒くさいところもちゃんと描いているんですよね。こうした男の友情についてどう思いましたか。
押田:高校のときにそういう友情をしてたかと言われるともう覚えていないですけど、大人になってからの人との付き合い方ってこういう感じだなみたいなのは思ったりします。
坪倉:たぶん外から見たら女々しいけど、本人たちからしたら結構本気なんだろうなって。まあ、実際にこういうことがあったらちょっと面倒くさいとは思いますけど(笑)。
阿久津:確かに(笑)。高校生って世界が狭いから、そこの中でどうにかしようと思ってしまうところがあるんじゃないかな。
ーー同じグループにいた友達が別のグループの子と仲良くしているのを見てモヤモヤしたり。
坪倉:僕は学生時代、あまり固定のメンバーにいないタイプだったんですよ。ある程度仲の良いグループはいるけど、日によっていろんなグループに行っちゃう人だったんで。
押田:めっちゃタクロウとハマってるやん。
ーーその結果、取り残されたグループのほうは「あ、あっちのグループにいるほうが楽しいんだ」と思ったりするわけで。
坪倉:…ありましたね、そういうのは(笑)。最近全然こっち来ないじゃん、みたいな。
一同:(笑)。
坪倉:自分の中でいろいろ理由はあるんですけどね。その時々のグループの事情とかもあったりするじゃないですか。
小沢:そのグループとの関係を信頼してるからこそ、別の場所に行くっていう考えもあるもんね。
坪倉:そうです。わりと周りのメンバーも結構いろんなグループに散っては戻ってきて、また散るみたいな感じだったんですけど、その中に1人だけ『全然こっち来ないじゃん』と言うタイプがいて。それこそミツルみたいな。そう考えると、やっぱりこういうことをやってるんですね、高校生って。
小沢:やってるやってる。大人になってもやってるところあると思う。
ーーみなさんの青春に関することも聞かせていただきたいです。
坪倉:青春ってなんかあった?
阿久津:いや、マジでないですね。僕にとってはミュージカル『テニスの王子様』が青春でした。本当に成長できる場所だったんですけど、その分、学校にはあまり通えなかったので、普通に高校生活を送ってみたかったなという気持ちもありますね。
押田:僕もちょっと近くて、高校のときは勉強しかしてなかったんですよ。だから、いわゆる青春みたいな記憶がなくて。お芝居の世界に入って、今めっちゃ仕事が青春だなって思うんですよね。高校生のときに普通の青春をやってみたかった思いはあるけど、でも今十分青春できてるからいいかって。
坪倉:僕は結構青春してきた方かなって思います。高校のときは部活1本で、部活が終わったら海に飛び込むThe青春みたいな。
押田:いいな〜。
ーー青春をちゃんとやり切った健全さみたいなものがありますよね。
押田:わかります。それこそ卒業できた人というか。
小沢:みんなは本当に<N学年>という制度があったらどうする? 3年で卒業したい?
阿久津:しないかもしれないすね。それこそ『テニミュ』を終えた後、立て続けに別の作品をやっている中で孤独を感じたことがあって。自分のホームがあるって、すごくいいなと思ったんです。だから、僕だったらなかなか卒業できないかもしれません。
坪倉:僕は結構飽き性なところがあって、同じことをやってるとすぐ飽きるんです。芝居が好きなのも、現場ごとに台本も周りの人も違うから飽きないというのがあって。だから、<N学年>には残らない気がするんですよね。
小沢:じゃあ、ちゃんと3年で卒業するんだ?
坪倉:そうですね。楽しくはいたい派なんで、自分が楽しくいれるところを探しに行きます。
小沢:これはちゃんと海に飛び込んだことがある人の発想かもしれない(笑)。がっくんはどう?
押田:ミツルと一緒かもしれないです。自分の巣から飛び立つのは怖いけど、ずっとここにいても成長はないなと思うタイプなので、1年だけ<N学年>を経験して、どんなものなのか知った上で、4年でちゃんと卒業する気がします。
ーー演劇はどなたでも楽しんでいただけるものですが、一方でこういう人が客席にいたらより一層素敵な出会いになる、というものはある気がしています。みなさんは今どんなことを考えている人、どんなことを抱えている人にこの作品が届いたら、より刺さると思いますか。
小沢:いろんな人のいろんな人生があると思うんですけど、その中でも自分の居場所を探している人にはより刺さる作品になると思います。あとは、ド直球の青春だからといって若い人だけが観て楽しめるわけではないので、たくさん人生経験を積まれている方がご覧になったらどう思うのかなって感想を聞いてみたいです。
坪倉:悩みごとが多い人には結構刺さるところがある気がしますね。
押田:あとは頑張る勇気が今いち出ない人とか。『頑張るってちょっとダサくね?』というターンってみんなあると思うんですけど、そんな人にこんな単純明快でいいんだって刺さってくれたらうれしいです。
ーーでは最後に、阿久津さん、誰に届けたいですか。
阿久津:う〜ん……全員に届け!
一同:(笑)。
小沢:まあ、いろんな人に観てほしいもんね(笑)。
阿久津:はい。いろんな人がいろんなことをやっていて、それをいろんな角度から観られるので、何回来ても新しい発見があるんじゃないかと思います。なので、1回だけじゃなく、何回も来て楽しんでほしいです!
取材・文:横川良明 写真:山岸和人
公演期間:2025年2月21日 (金) 〜 2025年3月2日 (日)
会場:新国立劇場 小劇場
出演 阿久津仁愛 押田 岳 坪倉康晴 小島梨里杏 富山えり子 中川晴樹
/安西慎太郎 池津祥子 大鷹明良
スタッフ 作:大歳倫弘(ヨーロッパ企画)
演出・美術:小沢道成
STORY いつの頃か、学校制度における〈卒業〉は自分自身で決断する行事となっていて、高校の3年制はもはや標準的なガイドラインでしかない時代。 ダイチ・ミツル・タクロウの仲の良い3人組は、いよいよ3年生の終わりが近づいたある日、卒業のタイミングを自由に選べる〈N学年〉にそろって進級し、「もう少しだけ……」と、〈やり残したこと〉に一緒に挑戦してから卒業することを決意する。 ……恐る恐る足を踏み入れた〈N学年〉の教室にいたのは、年齢不詳の生徒から30代、40代、50代……最年長は60代の生徒。そして、混沌とする教室で翻弄される若い担任教師。ダイチたち3人だけでやり遂げるはずだった大切な〈卒業イベント〉に、なぜか次々と介入してくるこのクセ強なクラスメイトたち。
彼らはなぜ卒業しないのか?そして、それぞれの「卒業」への思いと選択とは―?
公演ホームページ
https://mmj-pro.co.jp/shibashitotekoso/
2000年12月23日生まれ、栃木県出身。2014年に第27回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で準グランプリを受賞し、芸能界入り。2016年にはミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンで越前リョーマ役に抜擢され、俳優デビューを果たす。以来、舞台を中心にドラマや映画など幅広く活躍している。近年の主な出演作には、ドラマ『BLドラマの主演になりました クランクイン編』(EX)、『バントマン』(東海テレビ)、『D&D 〜医者と刑事の捜査線〜』(TX)、舞台『HUNTER×HUNTER THE STAGE』などがある。現在放送中のドラマ『家政婦クロミは腐った家族を許さない』(TX)にも出演している。
1997年4月9日生まれ、神奈川県出身。2016年、早稲田大学在学中に第29回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞、芸能界入り。2018年「仮面ライダージオウ」に明光院ゲイツ役で出演し注目を集め、ジャンルを問わず様々な作品に出演している。近年の主な出演作にドラマ『コスメティック・プレイラバー』、映画『水平線、映画『ファストブレイク』、舞台『巌流島』、舞台『西遊記』、舞台『劇走江戸鴉〜チャリンコ傾奇組〜』などがある。
1997年1月7日生まれ、鳥取県出身。2019年より「劇団番町ボーイズ☆」のメンバーとして、劇団公演に出演するほか、舞台・ドラマ・声優など幅広く活躍。近年の主な出演作に、舞台『魔法使いの約束』シリーズ(ネロ役)、ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』 ~One More Time~(主演・長谷川康太役)、舞台『東京リベンジャーズ ―天竺編―』(九井一役)など。2025年1月~TVアニメ第2期「UniteUp! -Uni:Birth-」に声優として若桜潤役で出演するほか、2025年4月には舞台『青のミブロ』主演・ちりぬにお役が控える。
1985年10月17日生まれ、京都府出身。演出家・脚本家・俳優。自身が主宰する「EPOCH MAN」では出演のほか脚本・演出・美術・企画制作なども手がける。21年上演の『オーレリアンの兄妹』が第66回岸田國士戯曲賞最終候補作品に選出。23年上演の『我ら宇宙の塵』が第31回読売演劇大賞「優秀作品賞」「優秀演出家賞」「最優秀女優賞(池谷のぶえ)」の3部門を受賞。近年手掛けた作品に陣一人芝居『Slip Skid』(脚本・演出)、東洋空想世界『blue egoist』(脚本)など。2025年4・5月には東京グローブ座にて『Bug Parade』作・演出を務める。
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