資生堂2024年12月期は108億円の最終赤字 25年は「勝負の年」と構造改革と注力ブランドへの集中投資を加速

決算発表会に登壇した藤原憲太郎社長

資生堂の2024年12月期連結決算は、売上高が前期比1.8%増(為替及び事業上の影響を除く実質は1%減)の9905億円、コア営業利益(営業利益から非経常項目を除き算出)が8.7%減の363億円、純損益が108億円の赤字となった。売り上げは日本と欧州がけん引したものの、中国、トラベルリテール、米州の影響で実質ベースで減収。コア営業利益は日本の大幅増益とコストマネジメントで363億円の黒字を確保したが、構造改革費用や21年に譲渡した「ベアミネラル(BAREMINERALS)」などの金融費用として引き当て金を計上したことで純損失が108億円となった。

同社は24年11月に2カ年計画「SHIFT 2025 andBeyondアクションプラン2025-2026」を発表し、売上高1000億円規模の注力ブランドの選択と集中、グロスプロフィット(売上総利益)の最大化、ブランド価値強化に向けたブランド・地域での連携したオペレーション体制の強化といった方針を明確にした。同時に、高収益構造の確立を掲げ、日本、米州、欧州、アジアパシフィックの収益性のさらなる改善、中国やトラベルリテールの事業基盤の再構築、グローバルでの固定費低減を目指している。

24年の実績について藤原憲太郎社長は「グローバルでのコア営業利益が350億円の見通し(24年11月に発表)を確実に達成し、構造改革が奏功して日本でのコア営業利益は281億円を計上した。グローバルで稼ぐ基盤向上に向けて進展した」と統括。今後2年で、構造改革、注力ブランドへの投資を通した成長基盤の強化と成長実現を改めて宣言し、25年を「勝負の年と捉えている。やるべきことを全てやり切るをテーマに取り組む」と藤原社長は意気込んだ。

マーケティング費用を注力ブランドへ集中投資

25年は、成長性、収益性、競争優位性に基づいて“コア3”“ネクスト5”と分類したブランドに、前年比で100億円増額したマーケティング費用全額を集中投資する。“コア3”は売上高1000億円を超える「シセイドウ(SHISEIDO)」「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「ナーズ(NARS)」、“ネクスト5”には次の1000億円規模を狙えるブランドとして「アネッサ(ANESSA)」「ナルシソ ロドリゲス(NARCISO RODRIGUEZ)」「イッセイ ミヤケ パルファム(ISSEY MIYAKE PARFUME)」「エリクシール(ELIXIR)」「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」を定める。

「シセイドウ」の24年売上高は前期比3%減に着地した。日本は20%台後半、欧州は10%台後半と成長を遂げたものの、売り上げ構成比の約半分を占める中国・トラベルリテールの減収が大きく影響した。日本ではファンデーション美容液の“エッセンススキングロウファンデーション”、欧州や米州、アジアパシフィックではエイジングケアライン“バイタルパーフェクション”が好調に推移した。25年は、3月に発売する新“アルティミューン”を成長の原動力として位置付ける。グローバルでほぼ同時にローンチし、一体感を持って売り上げ最大化に取り組む。中国では最高峰シリーズ“フューチャーソリューション LX”を強化し、米州では最新技術を搭載したサンケアの新製品を発売予定。グローバルでの統一した施策と地域の特性に合わせたプロダクト展開でさらなる成長を目指す。

「クレ・ド・ポー ボーテ」の24年売上高は同3%増で着地した。20%台前半の成長を実現した日本がけん引し、市場環境が厳しい中国市場でもプラス成長となった。ブランドの強みであるベースメイクが好調で、日本を始めとするアジアで新規客を開拓。24年9月にリニューアルした美容液“ル・セラム”もヒットし、スキンケアユーザーの拡大に貢献した。25年は中国で“ル・セラム”の発売を予定しており、コアとなるスキンケアライン、キーラディアンスケアなどの戦略的なマーケティングを進める。トリートメントサービスといった体験の提供を強化し、ラグジュアリーブランドとしてのポジション獲得を狙う。

「ナーズ」の24年の売上高は前年並みだった。エクリティ(ブランドが持つ資産価値)が高く中国でも着実な成長を遂げたものの、一時的な生産減で「大きな話題と飛躍的な成長は実現できなかった」(藤原社長)。25年は、ベースメイクのヒーロー製品としてのポジション強化を図るとともに、世界的に成長するチークに投資してキャンペーンを打ち出すことでブランドの話題性を高める。それらをデジタルで拡散・増幅し、メイクアップカテゴリーのシェア拡大を狙う。

25年は「技術力と付加価値をつけて製品としてお客さまに提供し、それを売り上げや利益に結びつける。スピード感のあるイノベーションパイプライン(社内資源の活用によるアイデア発案から迅速な事業化までを一気通貫させたステップ)導入を実現する」と藤原社長。コアブランドの価値構築や愛用者基盤の強化を図り、着実なシェア拡大を狙う。これらにより、売り上げの実質成長率は24年のマイナス1%から25年はプラス4%への転換を目指す。

グローバル企業レベルの高収益構造へ

24年は、不採算店舗の閉店と人員削減を実行し、計画通りに200億円のコスト削減を実現した。25年のコスト削減額目標も同額の200億円減を掲げているが、すでに実施する施策の貢献もあり、「非常に確度高く達成できる見込み」と藤原社長は話す。25年は、日本と中国が中心に実施していた構造改革の対象範囲をグローバルに拡大し、グローバル競合をベンチマークとした強力なトップダウンアプローチで、全地域でのグローバル企業レベルの高い収益性確立を目指す。

注力ブランドへの集中投資と収益の構造改革により、25年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比0.4%増(為替変動影響を除く実質成長率は4%増)の9950億円、コア営業利益が0.4%増の365億円、純利益が60億円を見込む。

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