「民の力」を象徴する存在でもある小樽運河で記念撮影する観光客ら(4日、小樽市で)
文化庁が4日発表した2024年度の日本遺産に、小樽市が申請した「北海道の『心臓』と呼ばれたまち・小樽~『民の力』で創られ 蘇(よみがえ) った北の商都~」が認定された。20年度に一度認定を逃していたが、再チャレンジでの獲得となった。道内の日本遺産は6件目。単独自治体での認定は江差町に次いで2件目となる。
明治以降、「北日本随一の都市」に発展しながら、高度経済成長期には「斜陽のまち」と呼ばれた小樽。運河保存運動などを経て観光都市として再生するまでの歴史を「民の力」をキーワードにつむいだ。「心臓」は、小樽ゆかりのプロレタリア作家小林多喜二が小樽を「北海道の心臓」と評したことにちなむ。
旧手宮鉄道施設や旧日本郵船小樽支店、色内銀行街、小樽運河を守る会関係資料など26件が構成文化財となっている。
21年7月に「候補地域」として認定された後、市日本遺産推進協議会は、各分野で活躍する人材の中から47人を「日本遺産地域プロデューサー」に育成。学校現場での周知や、関連旅行商品の開発に取り組んできた実績などが評価された。一方、「民の力」を次世代に継承する取り組みや北運河地区の整備が今後の課題と指摘された。
迫俊哉市長は「本市単独の認定は悲願だった。これを機にさらに磨き上げ、歴史と文化を生かしたまちづくりを進めたい」とのコメントを出した。
市は「小樽雪あかりの 路(みち) 」期間中の9~15日、構成文化財となっている旧三井銀行小樽支店で「日本遺産カフェ」を開催。1970~80年代の運河保存運動を闘ったNPO法人歴史文化研究所の石井伸和・副代表理事(69)は「保存運動以来、まちづくり運動を推進してきた立場として、心からうれしい。匂い立つような小樽の活躍を国が認めてくれたと受け止めている」と喜んだ。