自公が高校授業料無償化案を日本維新の会に提示:政治的駆け引きではない実のある議論を(NRI研究員の時事解説) – Yahoo!ニュース

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自民、公明両党は5日に、高校授業料の無償化を巡り、就学支援金の所得制限を撤廃する案を日本維新の会に示した。自民党はこれまで所得制限撤廃に慎重姿勢だったが、2025年度予算案可決などで日本維新の会の協力を得るために、譲歩を決めたとみられる。「年収の壁」見直しに向けた国民民主党との協議が足踏みをする中、自公は、2025年度予算の年度内成立に向けて、日本維新の会の協力を得る道を探り始めている。 国は現在、年収910万円未満の世帯の高校生に対して年間11万8,800円を上限に支援、私立高校の場合は年収590万円未満の世帯の高校生に上限39万6,000円を支援している。 今回の自公案は、年収910万円未満という所得制限を撤廃し、公立、私立問わずにすべての世帯に年間11万8,800円を上限に給付するものだ。この措置により、学費が安い公立は実質無償化が実現されることになる。しかし学費が高い私立では、無償化の実現にはならない。私立高校の完全無償化へ向けた追加支援については、2026年度の実施を目指して協議を継続する意向を自公は示している。 日本維新の会は、支援について所得制限を撤廃し、さらに支援金の上限を年63万円ほどに増額するよう求めている。また、2025年度からの私立も含めた無償化実現を求めている。日本維新の会は、高校授業料の完全無償化を全国に導入するための必要財源は、約6千億円としている。日本維新の会は私立の無償化を2025年度に実現できない自公案を不十分としており、なお両者間での協議が続けられる。

高校の授業料は、一部自治体が上乗せで支援をしている。例えば東京都は私立向けに上限48万4,000円を、大阪府も上限63万円を支援している。自治体によって高校授業料の支援に差があることが、国民の間に不公平感を生んでいるという問題もある。自治体による支援の差を縮小させ、不公平感を減らすために国の支援を一定程度強化することは意味があるだろう。 また、国による高校授業料支援は、経済的な理由から教育が受けられない状況をなくすこと、物価高による家計の教育費負担を軽減すること、そして少子化対策の観点から検討に値するものだ。 他方で課題もいくつかある。そのうち最大なのは財源の問題だ。2010年に旧民主党が所得制限を設けずに高校授業料の支援拡大を決めた際には、財源確保のために16~18歳までの子どもがいる場合に適用されていた所得税と住民税の扶養控除が廃止された。

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国民がそうした負担増加を受け入れるかどうかも慎重に見極める必要がある。財源確保が十分になされない場合には、既存の教育予算の中から賄われることになり、それが教育の質の低下を招く恐れもあるだろう。 さらに財源の観点を踏まえると、所得制限の撤廃が必要であるかという点も議論の対象とすべきだろう。現状は年収910万円が所得制限の水準に設定されているが、年収910万円は相応に余裕のある世帯と言えるのではないか。高校は義務教育でないことや、上記の財源確保の問題も踏まえると、金銭的な余裕のある世帯には、引き続き授業料を負担してもらうことも選択肢とすべきだろう。 このように、高校授業料無償化や支援拡大は、プラスマイナス双方の要因を慎重に見極め、十分に議論を深めたたうえで、実施の是非や設計を決める必要がある。政治的な駆け引きで決めてしまうようなことは、避けなければならない。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) — この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi)に掲載されたものです。

木内 登英

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