アメリカのトランプ大統領がパレスチナのガザ地区をアメリカが長期的に所有し再建するとした上、地区の住民を別の場所に再定住させると発言したことに中東諸国だけでなく世界各国から「国際法に違反する」などと反発や懸念の声が上がっています。
アメリカのトランプ大統領は4日、ホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と会談した後の共同記者会見で、「アメリカはガザ地区を引き継ぎ、われわれが仕事をする。ガザ地区を所有する。雇用と住居を無制限に供給する経済開発を行う」などと述べました。また、現在、ガザ地区に住むパレスチナ人は別の場所への再定住を進めるべきだとしています。この発言に対し、ネタニヤフ首相は「注目に値する」と述べ、前向きな姿勢を見せています。一方でイスラム組織ハマスやパレスチナ暫定自治政府は明確に拒絶する姿勢を示しているほかサウジアラビアやトルコなどの中東諸国も一斉に反発の声を上げています。また、フランスやドイツからも「ガザ地区からパレスチナの人々を追い出すことは国際法違反だ」などと非難の声があがっていて、イスラエルとパレスチナの2つの国家の共存を目指す和平案こそが唯一の解決策だと訴えています。
さらに、中国やロシアなども反対する立場を表明していて、トランプ大統領の発言は世界各国から反発や懸念を招く事態となっています。
ナチスによるユダヤ人の大量虐殺、ホロコーストの歴史を踏まえてイスラエル寄りの姿勢を示すドイツも、ガザ地区をめぐるトランプ大統領の発言について、反対する姿勢です。ベアボック外相は5日に出した声明のなかで「ガザ地区からパレスチナの人々を追い出すことは容認できず、国際法に違反する」としています。
その上で「パレスチナの人々に意見を求めることなしに解決策を示してはならない。2国家共存が唯一の解決策だ」と強調しました。
イギリスのスターマー首相はガザ地区をめぐるアメリカのトランプ大統領の発言について5日、議会で質問され「パレスチナの人たちには故郷への帰還と再建が認められなければならない。われわれは2国家共存に向けた再建に、彼らとともにあるべきだ」と答え、トランプ氏に同調しない立場を明らかにしました。
また、ウクライナを訪問中のラミー外相も会見で「われわれは、2つの国家がなければならないという信念を常に明確にしてきた。パレスチナの人たちが故郷のガザ地区とヨルダン川西岸で暮らし、繁栄できるようにしなければならない」と強調しました。
ガザ地区をめぐるアメリカのトランプ大統領の発言をめぐり、フランス外務省の報道官は、5日、「フランスはパレスチナの人々がガザ地区から強制的に退去させられることに重ねて反対する。これは国際法の重大な違反であり、パレスチナの人々の正当な願望への攻撃であり、さらには、2国家共存に向けて大きな障害となる」とする声明を発表しました。
そして、フランスは、イスラエルとパレスチナの平和と安全を保証できる唯一の解決策である2国家共存に向けて引き続き、取り組んでいくとした上で、ガザ地区の未来は、第三国によってコントロールされるのではなく、パレスチナ国家の枠組みで考えられるべきだと強調しました。